第10回 FFIT学術賞受賞者
河原林 健一 (Kawarabayashi kenichi )
国立情報学研究所 教授(所属は、2010年10月1日現在) |
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受賞テーマ | アルゴリズム的グラフマイナー理論の研究とその応用 |
◇◇業績概要◇◇ 河原林氏は、離散数学の最先端の理論を駆使し応用することで、離散数学・理論計算機両分野において数多くの未解決問題を解決し、多方面にブレークスルーを与えてきた。離散数学分野においては、最も深遠な理論とみなされている「グラフマイナー理論」を発展させることにより、Hadwiger予想に代表されるグラフ彩色問題や4色定理の周辺問題、曲面上のグラフに関する彩色問題等の問題で数多くの成果を収めてきた。さらに理論計算機分野においては、これらの理論を応用することによって多数の画期的な高速アルゴリズムの開発に成功してきた。 |
第10回 船井学術賞受賞者7名
渋谷 哲朗 ( Shibuya Tetsuo)
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター 准教授(所属は、2010年10月1日現在) |
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受賞テーマ | 大規模高次元構造データベース検索のための革新的アルゴリズム設計パラダイムの創造 |
◇◇業績概要◇◇ 渋谷氏はこれまで大規模データベース、特に生物分野におけるデータベースに対する検索アルゴリズムの研究を中心にバイオインフォマティクスの研究を行っており、情報科学、生物学にわたる多数の高ランクの国際学術雑誌・国際会議において数多くの発表を行ってきた。渋谷氏の研究は生物分野にとどまらない様々な産業的応用がある。特に最近創造した大規模高次元構造データベース検索のための新しいアルゴリズム設計パラダイムSMADは非常に独創的かつ革新的なものであり、それをもとに開発したタンパク質立体構造データベース高速検索技術は、きわめて革新的な大きな学術的価値をもつものである。 |
小林 研介 ( kobayashi kensuke )
京都大学化学研究所 准教授(所属は、2010年10月1日現在) |
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受賞テーマ | 量子多体効果に基づく半導体デバイスの開発とそのダイナミクスの研究 |
◇◇業績概要◇◇ 小林氏は高純度で制御性の高い半導体素子において、量子効果と多体効果が電子伝導に果たす役割に注目することによって、量子輸送ダイナミクスの研究に新局面を切り拓いてきた。小林氏の主たる業績は、「量子輸送におけるファノ効果」「量子系における『揺らぎの定理』の検証」「シリコンにおける巨大磁気抵抗効果」の3つである。これらは半導体の制御性を活かして成し遂げられた普遍性の高い独創的な成果であり、量子情報技術を含めた半導体デバイスの更なる発展につながるものである。 |
林 正人( Hayashi Masahito ) 東北大学大学院情報科学研究科准教授 (所属は、2010年10月1日現在) |
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受賞テーマ | ユニバーサル量子情報プロトコルの構築と量子暗号への応用 |
◇◇業績概要◇◇ 林氏は、量子通信におけるユニバーサル符号の理論的構成と実現という画期的な成果をあげた。量子通信は超高速かつ完全な暗号化通信ができる未来の夢の通信システムであるが、量子情報の完全な保持が難しく、情報源の性質に依存しないユニバーサルな誤り訂正符号の構築が実用化への大きな難関であった。林氏はこの難関の突破に世界で初めて成功し、日本が情報通信技術の世界最先端を走るために必要不可欠な要素技術を与えた。 |
齊藤 英治 ( Saitoh Eizi )
東北大学金属材料研究所 教授(所属は、2010年10月1日現在) |
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受賞テーマ | スピン流の伝送技術と基礎物理の開拓 |
◇◇業績概要◇◇ 「スピン流」は電子のスピンの流れであり、ジュール熱を伴わない超省電力での情報伝送や不揮発・高密度情報記憶を可能にするなどの画期的な性質により、その研究は近年世界的規模で進められている。その源流となるのが、齊藤氏によるスピン流の直接検出手法の発見である。従来スピン流はその検出すら不可能であったが、この状況を一気に打破したのは齊藤氏による逆スピンホール効果(スピン流を電圧に変換する現象)の発見とその系統的研究である。斉藤氏自身もこの手法を利用して「絶縁体中のスピン流伝送(電気信号伝送)」やスピンゼーベック効果等の画期的なスピントロニクス現象の発見を次々と成功させた。 |
四方 博之 ( Yomo Hiroyuki )
関西大学 システム理工学部 准教授(所属は、2010年10月1日現在) |
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受賞テーマ | 無線通信システムにおけるクロスレイヤ最適化に関する研究 |
◇◇業績概要◇◇ 従来、無線通信システムの物理層・MAC層・ネットワーク層は、階層化の概念に基づき、各層別に設計されてきた。これに対し、四方氏はこれらの階層を統合的に設計するクロスレイヤ最適化に関する研究を行い、セルラシステムから無線LAN、さらにはアドホックネットワークなど多様な無線システムを対象としたクロスレイヤプロトコルを世に送り出すとともに、その理論的・実験的評価を行ってきた。特に、無線ネットワークコーディング技術に関しては、その基本伝送方式を世界に先駆けて発表した。これを受け国内外で、その基本伝送方式の拡張・評価に関する研究が盛んになるなど、無線通信の研究分野に大きなインパクトを与えた。 |
圓道 知博 ( Yendo Tomohiro )
名古屋大学大学院工学研究科 助教(所属は、2010年10月1日現在) |
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受賞テーマ | 全周囲の光線を再現する三次元画像表示の研究 |
◇◇業績概要◇◇ 三次元テレビの現在主流の方式である両眼視差方式は立体視用メガネ等を利用し、左右眼に視差のある画像を見せる方式であるが、不自然な見え方や不快感・眼精疲労等の問題が指摘されている。これを解決するものとして光学的な像そのものを立体的に光線再現型の表示方式が注目されている。圓道氏は長年同方式による表示技術の研究に取り組んできたが、中でも多人数が360度自由な方向から観察できる円筒型の光線再現型3Dディスプレイは極めてユニークで画期的な提案であり、本分野に大きなインパクトを与えた。 |
山下 淳 ( Yamashita Atsushi )
静岡大学 工学部 准教授(所属は、2010年10月1日現在) |
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受賞テーマ | 見え難い情報を見るセンサ情報処理に関する研究 |
◇◇業績概要◇◇ 山下氏は、水中や雨天時に撮影された画質の劣化した画像からのノイズ除去や画像センシング、背景と同じ色の人物を抽出可能な画像処理、分厚い書籍を撮影した時の歪んだ画像から正常画像を構築する手法など、コンピュータにとっては「見え難い」情報を見るセンサ情報処理技術の開発に長年携わり、多数の論文賞等を受賞するなど数々の革新的な研究業績を上げ、国内外の情報処理技術の学術的発展に広く貢献している。 |