第21回 2021年度 FFIT学術賞受賞者
坂上 沙央里 ( Saori Sakaue )
ハーバード大学医学部 博士研究員 大阪大学大学院医学系研究科 招聘教員 (所属は、2021年4月1日現在) |
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受賞テーマ | 大規模ゲノムデータと多層オミクス・フェノタイプデータの 数理学的統合解析手法の開発 |
◇◇業績概要◇◇ ヒトの全遺伝情報の解読が終了して20年、ヒトゲノムデータは全世界で爆発的に蓄積している。 しかし当初の期待に反してゲノム情報を疾患の予防や治療に直接役立てる方法論は未だ確立途上である。特に、数百万人・数千万変異規模の巨大データを扱う大規模計算機科学、多層オミクスの生物実験情報と統合解析する情報科学、医療成果へ繋げる臨床医学の学際的研究が求められている。応募者は臨床医学と遺伝統計学のバックグランドを活かし、 ゲノム解析による健康長寿バイオマーカーの発見、ゲノム解析と特異値分解を用いた疾患の再分類の提案、ゲノム情報と機能生物学情報の統合解析手法の解析、ゲノム解析を括用した創薬ソフトウェアの開発など多岐に渡る成果を挙げた。応募者は Nature Medicine、Nature Genetics 等の国際学術雑誌に多数 の筆頭著者論文を発表し、米国人類遺伝学会からの2度の受賞・記者発表など日本人として初の業績を有する。既に数多くの巨大国際ゲノム共同研究コンソーシアムで主要解析者として認知されており、日本のゲノム研究の今後の発展において重要な役割を果たすと期待される。 |
清 雄一 ( Yuichi Sei )
電気通信大学大学院情報理工学研究科 准教授 (所属は、2021年4月1日現在) |
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受賞テーマ | プライバシ保護IoTデータ収集・解析基盤の研究 |
◇◇業績概要◇◇ 様々な人や組織がloTデータを横断的に活用した新たなサービスの構築・普及を考えており、今後これらのデータを流通させ、組み合せて活用していく制度やインフラが整っいくてことが予想される。
しかしながら、どこから個人のプライバシ情報が漏洩するかを予想することが困難になり、プライバシを保護する共通的で強固な枠組みの構築が重要な課題となる。本研究ではIoTデータそのものや
IoTデータを用いた機械学習の予測結果に存在する誤差を取り扱い、どのようなデータと組み合わせられてもプライバシの漏洩を防ぐことを現実的な仮定の下で保証するこの分野で極めて重要となる基盤を提案している。またプライバシを保護するのみではなく、プライバシを保護した上で正確な統計的解析や機械学習を行うことのできる仕組みを有す。
安全性の理論的証明及び仮想データでのシミュレーションのみでなく、実際にIoT基盤を構築して個人データを収集し、誤差を含む実データを用いた実験を行って提案基盤の有用性を明らかにしている。 |
関 真一郎 ( Shinichiro Seki )
東京大学大学院工学系研究科 准教授 (所属は、2021年4月1日現在) |
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受賞テーマ | 磁気スキルミオンの物質設計と機能開拓 |
◇◇業績概要◇◇ 関氏はこれまで、系の対称性やトポロジーといった、幾何学的な特徴に基づく物質設計を行うことで、様々な革新的な電子機能の開拓・実証を行ってきた。特に代表的な成果として、 「磁気スキルミオン」に関する研究が挙げられる。磁気スキルミオンとは、特殊な磁性体の中で生じる、電子スピンの渦巻き構造のことを指しており、トポロジーによって守られた安定なナノサイズの粒子としての性質を持つことから、次世代の磁気記憶素子のための新しい情報担体の候補として、近年大きな注目を集めている。関氏は、この磁気スキルミオン に関して、(a)世界最小サイズ (世界最高の情報密度)のスキルミオンを実現する新物質の発見、(b)電場を利用した高効率なスキルミオン制御手法の開拓、(c)スキルミオンの3次元形状を可視化する新しい観測手法の開拓、といった複数の画期的な成果を上げており、スキルミオンの超高密度・超低消費電力な情報担体としての応用展開を目指す上で、極めて重要な貢献をしてきた。 これらの業績は、関氏を筆頭・責任著者とする原著論文としてScience誌やNature姉妹誌に掲載され、国際的にも高い評価を得ており、船井学術賞にふさわしいと考えられる。 |
董 冕雄 ( Dong Mianxiong )
室蘭工業大学大学院工学研究 教授・副学長 (所属は、2021年4月1日現在) |
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受賞テーマ | IoT技術を用いた次世代耐災害システムの研究開発 |
◇◇業績概要◇◇ 候補者は、これまで無線センサネットワークやサイバーフィジカルシステムといったIoTの研究に一貫して従事し、ネットワーク資源の効率化や伝送遅延を最小化する通信技術の創出、 さらに大規模loTネットワークの技術などの基盤的研究に取り組んでいる。関連成果は、難関国際論文誌やトップ国際会議などで発表し、国内外で著名な賞を受賞している。その中で得られた知見を防災分野の研究に応用し、IoT技術である端末間通信(D2D)、省電力広域通信規格(LPWAN)、ドローン(UAV)を独創的に組み合わせ、臨時ネットワ ー クを構築するといった新たアプローチを試みた。 ドローンによるWi-Fiシステムを実装し、2019年には自治体主催の防災訓練にて実証実験を行った。この一連の取り組みは新聞各紙でこれまでに多数報道されたほか、文部科学大臣表彰ならびに知事表彰されるなど、学術的な研究成果が高く評価されただけでなく、広く社会に寄与すると期待されている。 |
堀﨑 遼一 ( Ryoichi Horisaki )
東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授 (所属は、2021年4月1日現在) |
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受賞テーマ | 情報科学駆動によるイメージング技術の革新 |
◇◇業績概要◇◇ カメラに代表されるイメージングシステムにおいて、光学系と信号処理系を協調してデザインする 研究分野はコンピュテーショナルイメージングと呼ばれ、計算機の高速化や情報科学分野の進展と歩調を合わせ、その発展と重要性拡大が急速に進んでいる。応募者は、当該分野において、近年、情報科学分野で活発に研究が行われているコンプレッシブセンシングや機械学習を利用した革新的な イメージングシステムの研究開発に取り組んでおり、多次元イメージング、位相イメージング、散乱イメージング等において、これまで困難であったシステムの簡素化や高機能化を実現している。 また、レンズレスイメージングを含む、信号処置を前提にした光学系のミニマル化を推進しており、これらの研究は世界的にも高い評価を得ている、すでに80報の論文業績を有し、近年では有力国際会議における招待講演も多く、関連分野の中でも傑出した成果を挙げている。 |
森本 雄矢 ( Yuya Morimoto )
東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授 (所属は、2021年4月1日現在) |
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受賞テーマ | デバイスと培養組織を融合したバイオマシン技術の開拓 |
◇◇業績概要◇◇ 応募者は、工学技術とバイオ技術の組み合わせにより、細胞の凝集にて形成される培養組織の高機能化を実現するとともに、培養組織とデバイスを融合したバイオマシン技術の開拓に成功した。 マイクロ加工技術を駆使して細胞含有ハイドロゲルの形状を制御することで、従来よりも高い収縮能を有する筋組織など高機能な培養組織の構築法を確立した。さらに、タンパク質パターニングによる培養組織とデバイスの融合方法を確立し、培養組織の「機能で働く」・「機能を測る」バイオマシンを実現した。 その結果、伸筋と屈筋の2つの骨格筋組織とロボット骨格を融合した“腕のように関節駆動するバイオロボット”やヒト臨床薬に対する筋収縮特性の変化を評価可能なヒト心筋組織チップなど、培養組織の独特な機能とデバイスの頑強性・定量性といった両者の利点を活かした融合システムの創出を世界に先駆けて実現した。 上記成果は数々のトップ国際論文誌への結実に加え、国内外で著名な賞を受賞するなど高く評価されている。 |