第7回 FFIT学術賞受賞者

第7回 船井学術賞船井哲良特別賞受賞者

田中 克己 ( Tanaka Katsumi )
京都大学大学院情報学研究科  教授

(所属は、2008年3月1日現在)
受賞テーマ Web及びマルチメディア情報システムに関する先駆的研究

◇◇業績概要◇◇

Web情報システム、マルチメディア情報システム、及び、データベース等の分野における国際的な評価の高いトップコンプライアンスや国際学術論文誌に多数の「先駆性・影響力の高い」研究論文を発表し,我が国の同分野の研究のリーディング役としての大きな貢献をした。特に質問対リンクに基づくハイパーメディア構築法、ビデオ映像検索モデル、Webの受動的視聴システム、Web比較ブラウジング方式、ソーシャルブックマークによるWeb検索結果リランキング方式などの研究は,独創性や新規性が極めて高いとともに、国際的にも多くの注目を集めている。同氏の研究姿勢は,新規性の高いアイデアの創出にもとづき新たな研究分野を開拓するというもので、国際的な論文被引用数も多く,その先駆性が高く評価できる。

江崎  浩 ( Esaki Hirosi )
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授

(所属は、2008年3月1日現在)
受賞テーマ 高機能インターネットアーキテクチャの先導的研究

◇◇業績概要◇◇

超高速・高機能インターネットを実現するための基盤アーキテクチャとプロトコルに関する研究開発を、グローバノレ規模での産学連携体制を確立し推進した。具体的には、インターネットにおけるトラフィックエンジニアリング制御ならびに高品質VPN(Virtual Private Network)構築手法として、現在ではほとんどの主要インターネットサービスプロバイダにおいて導入されているMPLSアーキテクチャと、次世代インターネットプロトコルであるIPv6(IPversion6)技術の実装ソフトウェアアーキテクチャの研究開発とIPv6技術を用いたモパイルネットワークアーキテクチャや経路制御アーキテクチャに関する研究である。両研究成果とも、産学連携の共同研究体制を確立し、その成果を商用システムヘの導入展開に資する研究開発活動へと発展させる先導的な活動を展開した。さらに、その活動を国際的共同研究/協調活動へと発展させ、それらはインターネットにおける国際標準技術として採択されるにいたっている。

小野 輝男 ( Ono Teruo )
京都大学化学研究所 教授

(所属は、2008年3月1日現在)
受賞テーマ 電流による磁化制御技術の開発

◇◇業績概要◇◇

小野氏は半導体分野で広く用いられてきた微細加工技術を用いてナノメートルスケールの強磁性細線や強磁性ドットを作製し、それらの示す電流と磁気モーメントの直接相互作用に起因する新しい磁化制御技術を開発した。具体的には、強磁性細線中の磁壁を電流で動かして細線の磁化状態を制御する技術、強磁性ドットに存在する磁気コアの向きを電流によって制御する技術の二つを開発した。従来、磁気デバイスの磁化の向きは磁場によって制御されてきたが、小野氏の開発した技術はデバイスを流れる電流のみで磁化の向きを制御することを可能とするものである。この技術によって磁場発生部は不要となり、新規な磁気メモリーや磁気論理回路などのスピントロニクスデバイス開発が可能となった。この開発した技術は、次世代スピントロニクスの基盤となる技術であり、エレクトロニクス分野の可能性を広げ、当分野における波及効果の大きい優れた業績である。

栗村 直(kurimura Sunao)
独立行政法人 物質・材料研究機構 光材料センター光周波数変換グループ
主任研究員

(所属は、2008年3月1日現在)
受賞テーマ 擬似位相整合非線形光学の研究

◇◇業績概要◇◇

栗村氏は非線形光学波長変換を用いて、従来特定の波長で固定されていたレーザーの波長を、自由に高効率変換することを可能にしてきた。擬似位相整合という新しい概念の基に、波長変換デバイスに設計の概念を持ち込んだ。用途に合わせて波長変換した光源を実現し他分野へ大きな波及効果を及ぼしている。バルク、導波路など多彩なデバイス形態を実現して、波長多重通信、分子分光、量子光学、シリコンフォトニクス、など新規分野へも精力的に進出しており、擬似位相整合非線形光学を先導している。光通信用波長変換デバイスでは、世界最高効率を更新し続けている。紫外擬似位相整合波長変換デバイスでは最短波長266nmの記録を有している。産業応用を見据えた新規材料・新規デバイスの開拓にも積極的であり、波長変換デバイスのベンチャーSWINGを設立する傍ら、企業への技術移管も行っているとともに、各学会・協会の委員を歴任しており、学術界における貢献度は非常に大きい。

小寺 秀俊 ( Kodera Hidetosi )
京都大学大学院工学研究科 教授

(所属は、2008年3月1日現在)
受賞テーマ 圧電材料の基礎研究とそれを用いたMEMS及びμTASの研究

◇◇業績概要◇◇

小寺氏は、PZT薄膜を基本とした圧電薄膜の組成と特性に関する基礎研究を行うとともに、基礎研究成果を元に、高速度通信用(60GHz帯)のMEMSスイッチや指向性可変アンテナおよびマイクロポンプを考案し開発した。また、磁性粒子をPDMSに高密度充填する方法を考案し、それを用いてマイクロアクチュエータを作成しマイクロスイッチや可変アンテナの新たな構造として磁性粉体を利用することを提案している。圧電素子の応用としては通信用デバイス以外に圧電駆動型のマイクロミラーデバイス等を開発した。これらの圧電技術・粉体成形技術は企業に引き継がれ多くの企業が利用している。また、細胞内および細胞間の情報伝達を計測するマイクロ流路とオリフィスおよび電極を集積化したマイクロデバイスの構造と加工方法を考案し、心筋細胞を始め様々な細胞機能を計測するとともに、細胞内情報伝達の細胞機能シミュレーションシステム開発に大きく寄与した。

橋本 巨 ( Hashimoto Hiromu )
東海大学工学部機械工学科 教授

(所属は、2008年3月1日現在)
受賞テーマ 紙・光学フィルムを対象としたウェブハンドリング理論の体系化とその生産現場への応用

◇◇業績概要◇◇

紙や光学フィルムなどの連続柔軟媒体はウェブと総称され、記録媒体やディスプレイ用材料と多く用いられ、情報技術の重要な一役を担っている。ウェブの生産工程においてこれらを搬送し途中処理工程を経て最終的に巻き取るウェブハンドリング技術は、ウェブ製造に関わる重要基盤技術である。しかしながら、ウェブハンドリング技術は従来生産現場での経験の積み重ねにより練り上げられたものであり、技術自体は相当高度なレベノレにはあるものの、搬送・巻き取り中に生じるしわ、スリップ、巻きずれなどウェブの品質に深刻なダメージを与える現象を予測・解明するための学術的なバックグラウンドには極めて乏しい状況にあった。本研究においては,従来の経験則をべ一スとしたウェブ搬送並びに巻き取り技術から脱却して、これらの技術のキーとなる生産速度の高速化に伴う周囲からの空気巻込みとそれにともなうウェブとローラ間のトラクション特性の変化を記述し得る新理論モデノレを構築している。さらにこれを応用して、従来予測が不可能であったウェブ搬送中におけるスリップ、しわ、巻きずれなどの不具合現象を予測かつ防止し、ウェブを安定に生産する手法を確立した。