第6回 FFIT学術賞受賞者
藤田 博之 ( Fujita Hiroyuki )
東京大学 生産技術研究所 教授
(所属は、2007年3月1日現在) |
|
受賞テーマ | MEMSとマイクロアクチュエターの研究と情報・通信機器への応用 |
◇◇業績概要◇◇ MEMS(micro electoro mechanical system:マイクロマシン)は、半導体微細加工を利用して極微細の立体構造を作り、センサやマイクロアクチュエータをシリコンチップ上に実現する技術である。 |
増永 良文 ( Masunaga Yoshifumi )
お茶の水女子大学 理学部情報科学科 教授 (所属は、2007年3月1日現在) |
|
受賞テーマ | データベースシステムとその高度応用に関する先導的研究 |
◇◇業績概要◇◇ 増永氏はデータベースシステムとその高度応用に関する先導的研究で国際的に評価される研究を行ってきた。 1970年代末から80年代始めにかけてリレーショナルデータベースのビューサポートの研究で顕著な研究成果をあげ、その結果を世界第1級のデータベースの国際会議であるVLDB国際会議で発表する業績 をあげた。その後、マルチメディアデータベースシステムの研究・開発で顕著な成果をあげた。日本の他の研究者に先駆けてその研究・開発に取り組んだ結果、1987年には情報処理学会の会誌である「情報処理」でマルチメディアデータベースシステムの特集号を組み、その巻頭論文を執筆し、その後その論文は多くの研究者に引用されることとなった。1980年代後半から1990年代初頭にかけてはオブジェクト指向データベースシステムに関する研究を行った。特にオブジェクト指向データベースシステムのマルチメディア応用研究で成果をあげた。1990年代中頃からは、リレーショナルデータベースシステムやオブジェクト指向データベースシステムに続くべき次世代データベースシステムの研究・開発に取り組み、バーチャルリアリティとデータベースシステムを統合して仮想世界データベースシステムを実現した。近年はウェブマイニングの研究にも鋭意取り組み、情報科学と社会科学の融合に端緒を切り開くなど、一貫してデータベースシステムとその高度応用に関する研究を先導し続けている。
|
根元 義章 ( Nemoto Yoshiaki )
東北大学大学院情報科学研究科 教授 加藤 寧 ( Katou Nei ) 東北大学大学院情報科学研究科 教授 タレブ タリク ( Tarik Taleb ) 東北大学大学院情報科学研究科 助手 (所属は、2007年3月1日現在) |
|
受賞テーマ | 衛星と地上ネットワークの融合を目指した新世代ネットワークプロトコルに関する先駆的研究 |
◇◇業績概要◇◇ 有線と無線が融合した次世代ネットワークが進む中、ディジタルディハイドを解消し、どこからでも容易にインターネットに接続可能な衛星インターネットが世界的に注目されている。中でも特に低遅延で移動性に優れる低軌道衛星システムが大きな脚光を浴びている。本研究では、低軌道衛星システムとこれまで地上で構築されている有線及び無線ネットワークとのシームレスな接続を目指し、高効率かつ公平性を有する新世代ネットワークプロトコルを世界に先駆けて提案しその有用性を理論とコンピュータシミュレーションにより明らかにした。また、高頻度に移動する利用者を効率的に管理し、管理コストの低い移動管理技術を確立した。 |
小野 浩司 ( Ono Hiroshi )
長岡技術科学大学 教授 川月 喜弘 ( Kawatsuki Nobuhiro ) 兵庫県立大学 助教授 (所属は、2007年3月1日現在) |
|
受賞テーマ | 光波電解ベクトル情報記録方式による光記録媒体の高密度化に関する研究 |
◇◇業績概要◇◇ 小野氏等は、現行光ディスクシステムをできる限り踏襲できる新しい記録方式として、光波電界ベクトル和による多重・多値記録方式を提案すると共に、当該記録方式を実現できる記録材料系を提案している。記録材料系は、偏光照射によって、液晶分子配向を制御・固定化することが可能な、光架橋性高分子液晶であり、①偏光照射によって液晶分子配向方向が制御され大きな位相差を形成できる、②架橋構造を取るため熱的に安定な記録が可能である、③重ね書きした場合にお互い独立に情報記録が可能、といった特徴がある。小野氏等は、これらの特徴を生かし、さらに、405nm波長帯で記録可能な材料を開発し、光波電界ベクトル記録方式による多値・多重記録を実証しており、新しい、実現性の高い高密度記録方式への開発分野を開拓した。 |
向井 剛輝 ( Mukai Kouki )
横浜国立大学大学院 工学研究院 助教授
(所属は、2007年3月1日現在) |
|
受賞テーマ | 半導体量子ドットを用いた光通信素子に関する先導的研究 |
◇◇業績概要◇◇ 光通信で用いられる1.3ミクロン帯で発光する半導体自己形成量子ドットの作製方法を1994年に世界で初めて見いだすとともに1999年にはこれも世界で初めて、量子ドットを用いた半導体レーザを、発振波長1.3ミクロンで室温連続発振させることに成功した。量子ドットを用いた光素子は、情報トラフイックが飛躍的に増大中の光通信事業において、今後の中核技術となることが期待されている。向井氏は1994年以来現在に至る量子ドット光通信素子の実用化において、量子ドット特有の物理現象の解明や、工学的見地からの量子ドット材料の研究、更にはデバイスの開発といった、非常に広い範囲で先導的役割を果たした。 |
薮上 信 ( Yabukami Shin )
東北学院大学 工学部 助教授(所属は、2007年3月1日現在) |
|
受賞テーマ | 室温で動作し10-13T台の磁界検出分解能を有する薄膜磁界センサ |
◇◇業績概要◇◇ 本研究における磁界センサは磁界印加に伴う磁性薄膜の透磁率変化を高周波インピーダンス変化として取り出すもので、数100%以上の大きなインピーダンス変化が得られる。薮上氏は本センサが室温で動作する薄膜磁界センサとしては原理的に最も高感度になりうる点に着目し、これまで約9年間の研究の中で、2001年には10-11T台、2003年には10-12T台と常に世界記録を更新してきた。薮上氏はこのセンサ特有のカオスによるノイズ発生メカニズムを明らかにするとともに、ノイズを抑制しつつ、大きなインピーダンス変化を得るために、共振型の伝送線路構造のセンサデバイスを開発した。その結果501kHzの交流磁界において7.4×10-13Tの磁界検出分解能を得た。これは室温で動作する薄膜磁界センサとして、世界最高分解能であるとともに、SQUID(超伝導量子干渉素子)に匹敵するものである。これにより従来不可能とされてきた室温で動作する生体磁気信号計測が現実的な課題になりうる成果と考えられる。 |