第5回 FFIT学術賞受賞者

第5回 船井学術賞船井哲良特別賞受賞者

西田 正吾 ( Shougo Nishida )
大阪大学大学院基礎工学研究科 教授

(所属は、2006年3月1日現在)
受賞テーマ ヒューマンコンピュータ交流技術の先導的研究

◇◇業績概要◇◇

西田氏は、認知工学を応用した教育訓練システム、設計意図に着目した知識伝承支援システム、大規模システムの階層型管理方式などいずれも実用化につながった技術開発を行い、人問機械協調型システム技術の発展に貢献した。またソフトウェア開発プロジェクトにおけるコミュニケーション支援方式や大規模災害発生時の情報伝達支援方式の開発を通じて、コミュニケーション支援技術の発展にも貢献した。さらに、感性コミュニケーションや拡張現実感などのメディア関連技術の研究開発にも貢献した。これらの成果は、国内および国際的に各種受賞などの形で評価されている。また、ヒューマンインタフェースエ学、メディアエ学に関する著書を多数執筆し、この分野の学問体系の確立に貢献してきた。さらに、電子情報通信学会のヒューマンコミュニケーショングループ(2003年度運営委員長)やヒューマンインタフェース学会(2004-2005年度会長)など、この分野の学会活動に深く関わり、日本におけるヒューマンインタフェース分野の発展に寄与してきた。 

川本 広行 ( Hiroyuki Kawamoto )
早稲田大学理工学術院機械工学科 教授

(所属は、2006年3月1日現在)
受賞テーマ 電磁界中における粒子のダイナミクスとその画像形成技術への応用に関する研究

◇◇業績概要◇◇

研究のキーワードは、「電磁力」「マイクロ」「画像」であり、対象は、「情報精密機器」である。情報精密機器は、マルチメディアの基盤となるハードウェアであり、なかでもカラープリンタなどの画像形成装置は、視覚を介して情報を記録・伝達するための重要な機器である。わが国が世界で突出して優位な分野でもある。この画像形成装置は、電磁気力や流体カを利用してトナーや液滴などの微粒子の運動や相変化を高速・高精度に制御する技術を基盤としている。このような観点から候補者は、電磁粒体カ学、換言すれば、「電磁気カや流体カによる粒体輸送の精密制御に関する研究」とでも称すべき学際的な研究と、実際の機器の高性能化に寄与する研究を行っている、また、これをセラミックスなどの材料科学、マイクロ加エ、マイクロマシン、生体科学などへ応用する研究も行っている。 

前野 隆司 ( Takashi Maeno )
慶應義塾大学工学部機械工学科 教授

(所属は、2006年3月1日現在)
受賞テーマ ヒトの触覚情報知覚機構解明とヒト規範型触覚センシングの研究

◇◇業績概要◇◇

本研究は、ヒトが触覚情報を知覚するメカニズムの解明と、メカトロニクス・ロボティクス機器への得られた知見の応用という二つのフェーズから成る。前野氏は、まず、物体に接触する際のヒト指腹部の変形と触覚情報知覚機構の関係を、有限要素解析および実験により明らかにしている。すなわち、指紋や真皮乳頭は触覚受容感度向上のために有効であること、4種類の触覚受容器はひずみが集中する箇所に配置されていることなどの新たな知見を得ている。
次に、ヒト触覚機構に関する知見を応用して、センサが弾性体内に分散配置された分布触覚センサの情報処理機構を提案している。すなわち、重量や摩擦係数が未知の物体の把持力制御や対象物の質感検出のための分布型触覚センサとその制御アルゴリズムを開発し、ヒトの特徴に学ぶ人工物設計法の有効性を示している。
これらのユニークな結果は、学会で高い評価を得るのみならず、メカトロニクス・ロボティクス分野における触覚情報処理研究領域自体の発展に大きく貢献している。 

大石 進一 ( Shinnichi Oishi )
早稲田大学理工学部 教授

(所属は、2006年3月1日現在)
受賞テーマ 線形系の精度保証付き数値計算学の確立と実用化に関する貢献

◇◇業績概要◇◇

連立一次方程式や固有値問題などの線形代数方程式の数値解法は多様な問題の数値解析でしぱしぱ必要になり、その次元数も原間題の解精度を上げようとすれぱ数百万・数千万次元以上にもなる。したがって、これを高速かつ精度良く解くことが数値解析上極めて重要になりつつあり、この傾向は益々強まっている。大石教授は、連立一次方程式に対して、淳動小数点演算の丸めモードの制御方式を用いることによって、解析プログラムを多少変更するだけで既存の数値計算ライブラリの高遠性を保持したまま計算コストを殆ど増やすことなく精度保証ができることを明らかにし、精度保証は不可能か出来たとしても計算コストが増大しすぎて実用的ではないという常識を打ち破って一挙に実用化のレベル}こ到達させた。このことは数値計算における一種の革命であり、非常に広範囲な分野に多大な影響を与えることが期待できる。 


松野 文俊 ( Fumitoshi Matsuno )
電気通信大学電気通信学部知能機械工学科 教授

(所属は、2006年3月1日現在)
受賞テーマ メカニカルシステムのダイナミクスベースト制御とレスキュー工学の構築

◇◇業績概要◇◇

従来の制御系設計はシステムに有限次元近似や線形近似を導入し、標準問題に帰着することで行なわれていた。
この設計方法ではシステムが本来持つダイナミクスの特徴を失ってしまい、非常に複雑な制御系しか導出されない。
松野氏は近似を導入せず、システム固有の物理特徴を生かした制御系設計重要性を指摘している。その結果として物理法則に適ったシンプルかつロバストな制御器は設計できることを数学的および実験的に示し、その考えをダイナミクスベースト制御として提唱している。この設計法は高遠・軽量化を要求される情報機器や宇宙構造物の制御への適応が可能であり、メカニカルシステムの制御における貢献は非常に大きい。又松野氏は神戸大学在職中の1995年に阪神淡路大震災により教え子を失っている。その体験から工学研究者として災害時にどのように貢献できるかを考え、ITとRT(RobotTechnology)を融合したレスキュー工学を提唱し、11年に渡って新しい分野の開拓のために心血を注いできている。最近では文部科学省のレスキューロボットに関する大型プロジェクトを推進し、災害直後の迅速な情報収集を目的として、様々なレスキューシステムを開発している。また、顕著な業績をあげた若手のレスキュー工学研究者を奨励する賞を創設(競基弘賞:阪神淡路大震災で亡くなった学生の名前を冠にした賞)して、後進の育成にも多大な貢献をなしている。 

青木 孝憲 ( Takanori Aoki )
 大阪産業大学 工学部電気電子工学科
奥田 昌宏 ( Masahiro Okuda )
 奥田技術事務所

(所属は、2006年3月1日現在)
受賞テーマ 相変化型光ディスク材料および新規酸化物光ディスク材料の開発と記録メカニズムの解明

◇◇業績概要◇◇

現在、光ディスクは情報システムのストレージ部門においてHDD(ハードディスク)や半導体メモリー(フラッシュメモリー)同様に不可欠なメモリーとして存在するが、本グノレープは開発当初から相変化型光ディスクの開発に挑わってきた。研究初期の段階では、今日、主流の材料のGe-Sb-Te系およびAg-In・Sb-Te系については本グループでも深く係わり材料探索に傾注し、特に結晶化メカニズム(結晶化速度の詳細な測定)の追求は実用化へ大きく貢献した。又さらなる高密度化を達成するため半導体レーザーの短波長化に対応する材料の探索を行い。ブルーレイはもちろん紫外光にも感度がある酸化物材料を発見したことは特筆すべき点である。酸化物薄膜は通常のスパヅタリング法などの作製手法では透明な膜しか得られないが、本グループが独自に開発したレーザーアブレーション法で異種の酸化物薄膜を多層積層することにより、短波長に大きく感度がある光ディスク用記録膜の開発に成功した。最近では多層積層膜よりシンプルな構造の単層膜で短波長に対応する金属膜(高純度のFe)および高融点金属(W、Mo)の酸化物薄膜を用いた光ディスクの開発に成功している。これらの記録・再生・消去のメカニズムについて詳細にわたり物性測定を行い明らかにした。